根津美術館
2015/4/28 大学が午前中に終わって、午後特にやることもなかったので、自作の「美術館リスト」を探って、この日の行き先に決めたのは港区南青山にある「根津美術館」です。
根津美術館は表参道の住宅街側に位置しています。
根津美術館は、東武鉄道の社長などを務めた実業家の根津嘉一郎さんが収集した日本や東洋の古美術品コレクションを保存し、展示するために作られた美術館で、嘉一郎さんの「コレクションを『衆と共に楽しむ』」という意志を継いだ二代目・根津嘉一郎さんによって、1940年に財団が創立され、翌年根津美術館が開館しました。
1945年、戦災で展示室や茶室など美術館の大部分を焼失しますが、その9年後に美術館本館を再建、再建から10年後には増築を行い、1991年には創立50周年の記念事業としてさらに増改築を行いました。
そして、現館長である根津公一さんにより、2006年より3年半をかけた新創工事で、以前の新館を建物免震の収蔵庫に改築、3つの倉庫と旧本館の取り壊し、新たな展示館を建設し今の形になりました。
実に歴史の深い美術館で、設計を担当した隈研吾さんも大学生の頃、訪れていたそうです。ここからは、隈さんの語りからの抜粋を含めつつ記述させて頂きたいと思います。(Youtubeに美術館について語られた動画がアップされています。)
まず土地について考察させて頂くと、根津美術館が建っている表参道という地は、東京の中でも少し不思議な土地で、現代的なファッションと住宅とが一つの軸に収まり突如、異次元空間に引き込まれたような感覚を覚えます。
都市が発展を始めた頃、ここはケヤキ並木のある、まさに”参道”といった感じ。明治神宮の参道として作られた表参道は、日本の他の道と違って、起伏に関係なく勾配に合わせながらまっすぐに引かれているそうです。
この参道の突き当たりに明治神宮、そして反対の突き当たりが根津美術館になるように位置していて、隈さんは「2つの”聖なる森”を繋ぐ回路」だと称されていました。
根津美術館は道路側を竹林に覆われていて、異空間性を漂わせています。 たけのこ、久しぶりに見た!
美術館の入り口はこの竹林を右手に進んでいって右折したところにありまして、透明な看板の後ろには「根津美術館八景」の「月の石舟」が置かれています。
そして、また右を向き、大きく出た庇の下を歩いていきます。
竹林と庇によって直射日光が遮られ薄暗くなった廊下を歩くことで、段々と都市空間からアートの世界へと誘われるのです。
廊下の突き当たりを左に曲がるとようやく美術館の入り口に到着します。
黒く大きなボリューム感でありながら、薄く伸ばされた庇が軽やかな印象を与えます。
この経路の回転を無意識にさせることが、気持ちを美術館モードへ転換するための秘密なのです。日本庭園やお茶の路地を思い浮かべて頂くと分かりやすいと思いますが、気分を転換させるために自然と空間にメリハリをつけ、90度の回転を用いるのです。
ヨーロッパでは一つの軸線の行き着く先に凱旋門などのゲートがあり、道を進み深いところに行くことで真理を徐々に変えていきます。
ですが、日本はそれほどの距離が取れませんから、曲がるという行為でその効果をもたらしているわけです。
美術館内も経路のデザインがなされており、美術館に入ると庭園があって、まず左に曲がる。第一展示室に向かうために、また左、右と曲がります。
直線的につながっていた方が美術館としてはいいのではないかと思っていましたが、これは美術館のWhite cube的な考えなのでしょう。
というのも、隈さんは根津美術館を設計する際、庭をデザインするように設計され、箱をデザインする通常のプロセスとは違ったプランニングを計画されたそうです。
庭には経路があり、要所で劇的な変化が与えられており、その連続が庭を作り上げるので、その要所をどうするか、想像力を高め考えていく必要があるのです。
これが日本独特の風情と言いますか、日本庭園にしかない魅力に思います。
気分としては「中外一体」の美術館を目指しており、脇の緑を感じながら美術品を見る。そして緑をまた感じる。実際に訪れてみて、このような美術館こそ人々に求められているのではないかなと感じました。
庭園ではカキツバタが咲き始めていて、4月下旬から5月上旬が見頃なんだとか。
それで現在5月17日までの展覧会は、尾形光琳300年忌記念特別展と題し、「燕子花と紅白梅」が行われています。この2点の国宝の屏風が一堂に会するのは56年ぶり!そのためか、平日にも関わらず多くの来訪者がいらっしゃいました。
展示室の一番大きなケースにこの2点の屏風は展示されていたのですが、それを鑑賞される方々の様子に若干の驚き。双眼鏡で見ておられる方などはたまに見かけますが、ソファーに座って鑑賞している人の多さに驚きました。
20〜30人くらい一列に腰掛けられるソファーが置かれているのも大胆でしたが、常に満員状態でした。私も隙間を見つけてちゃっかり座って鑑賞。。
これも後々調べてから納得した話で、「ゆっくり見る」というのが隈さん流の根津美術館の楽しみ方だと。早く見たときと作品が違って見えてくる、目が馴染んでくると光やテクスチャーがリアルに伝わって来るということです。
最近はスキャンされデータ化された絵画をウェブ上で観覧できたり、美術を身近に感じることは出来るようにはなりました。それも良いことですが、余裕のあるときは実際に足を運び現物を鑑賞するということの大切さも忘れてはいけませんね。
隈さんの、若い人たちにこの美術館で「時間の楽しみ方を学んで欲しい。」という言葉には深い意味が込められている気がしました。
庭園から美術館へのアプローチ。閉館間際の17時頃。こんな夫婦に私もなりたい。
(´-`).。oO(余談に入ります。
最近、余裕のある日が増えて建築巡りが充実しているし、更新率も始めた時くらいの異例の高さで我ながらあっぱれ(^O^)♪
だんだん建築の知識も定着してきて書きやすくなった気もするし、ふと「このブログ始めて良かったなぁ」って思ったりします。
あんまりSNS(TwitterとかFacebookとか)は好きじゃなくて、なんか自分を晒すのは苦手で。この性格知ってる友達は誰もブログやってるなんて思わないだろーな、と。(笑)
でもこんなブログを誰かに読んで頂いていると思うと、未熟なままではいられないなと思うし、もっと頑張ろうと思える。そういう面では発信することって意味あることなのかなって感じます。
いつもスターをくれる方々、本当にありがとうございます。
こんな気持ちになったのは、表参道を歩いていてHatenaさんの本店をたまたま見つけたからでしょうか?
だんだん将来のこととか悩むことも多くなってきたけれど、こらからも自分のペースで自分らしく生きていきたいと思います。(締めが重たい・・・!)