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金沢21世紀美術館

2014/08/21 SANAA建築の中でとても有名な金沢21世紀美術館へ行ってきました。

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兼六園側から見た美術館。

 

 金沢21世紀美術館金沢市の中心部に位置し、誰もがいつでも立ち寄ることができ、様々な出会いや体験の場になるような、『まちに開かれた公園のような美術館』を目指して設計されました。

 

 どこからでも人がアクセスできる立地条件を生かし、建物には裏と表のない、どの方向も正面であるような円形を用いました。

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(参照:金沢21世紀美術館 | フロアマップ

 

 フロアマップからわかるように、展示室は四角で作られています。その寸法は、1:1、黄金比、1:2の三種類を基本形としていて、天井高も4.5、6、9、12mの4種類を基本としています。

 

 その美術館の周りを楕円で囲うようにランドスケープデザインで道が作られており、その内側に点在して展示作品が置かれています。

その一部を簡単にご紹介させていただきます。

 

 まずは、オラファー・エリアソンさんの<カラー・アクティヴィティ・ハウス>。

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シアン、マゼンダ、イエローの3色のガラスの組み合わせと、環境の変化、見る人の動きにより見える色が変わり、異なる風景を作り出します。
 
 こちらは、フローリアン・クアールさんの<アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3>。

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このようなチューバ状の管が大小様々、屋外に12個点在しています。2つの管が地中で繋がっていて対になっていて、思わぬところに声が届きます。

 友達同士で声が聞こえるところ探したら楽しそう!(見つかるのかな・・・。)

 

 こちらは作品ではないのですが、妹島和世さんがデザインした椅子も屋外に置かれていて、休憩や集団で談笑するために利用することができます。

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座り心地はツルツルしていて違和感なく体にフィットするような感じ。なんだか幸福感。

 

 館内に入っても展覧会スペースだけでなく、チケットを買わずも入れる交流ゾーンが設けられており、今までにない「開かれた美術館」を実現しています。

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四角い展示室と円の外周の隙間にできた空間に、長い一続きのベンチが置かれていたり、ラビットチェアーがずらりと並べられていたり、はたまたカーペットの上に四角い箱がバラバラと置かれていたりと、自分の好きな場所を見つけて好きなだけいることができそうです。

 

 再度、美術館のあり方についての記載となりますが、21世紀美術館は「新しい文化の創造」と「新たなまちの賑わいの創出」を目的として開設されました。そして、21世紀という大きな歴史の転換点にあたり、新たな街づくりへの対応が求められ、先に記載した通り、『まちに開かれた公園のような美術館』をコンセプトとして掲げたわけです。

 

 さらに、その中には4つの理念が込められているそうです。(美術館パンフレットから引用させて頂いています。)

 それは、

  • 世界の「現在(いま)」とともに生きる美術館
  • まちに活き、市民とつくる、参画交流型の美術館
  • 地域の伝統を未来につなげ、世界に開く美術館
  • 子供たちとともに、成長する美術館

 だそうです。

 この4つの理念を掲げ、ミュージアムとまちとの共生により、新しい金沢の魅力・活力を創出していきながら、気軽に、楽しく、誰でも利用出来る美術館を目指しています。

 

 その考えは外構だけでなく、内部構成にも取り入れられています。

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 フロアマップから読み取れるように、展示室は間隔を空けて配置されており、各展示室は複数の移動空間で縦横に繋がり、自由な動線を作ることがされています。

そのため、展示会のサイズによって展示室の使い方が変えられ、大きな展示会ならば全体を使い、小さな展示会であれば美術館のエリアを狭められるのです。

そうすることで、展示会の規模に応じて美術館の範囲が変わり、空間の雰囲気もどんどんと変わっていくような計画がなされています。

 

 また、この美術館の大きな特徴は館内に設けられた4つの「光庭」と名前が付けられた中庭にあると思います。

 

 マップで光庭Hと書かれたところにあるのは、レアンドロ・エルリッヒさんの<スイミング・プール>という作品。

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地上から見下ろすと、あたかも水がプール全体に満たされているようにみえます。でも、下には人影が。。。

 

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なんとプールの内部はこうなっていて、展示室6から階段を降りて行くことができ、水面越しに地上を見上げるという不思議な体験が出来ます。

 地上はチケットがなくても入れるエリアで、なんだろう?と興味を持って覗いた人とプールの中の人との出会いを演出します。

知らない人なのに、水面が境界となり顔の輪郭もボヤけて、緊張感なく自然とみんな手を振り合っていました。

 

 こちらは、光庭Fにあるパトリック・ブランさんの<緑の橋>です。

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交流ゾーンと美術館ゾーンの間に位置したこの中庭は、両ゾーンを繋ぐ存在として、とても大事な役割を担っているため、ジャングルのような、はたまた温室のような、緑の多い植栽計画がされています。

 

 他にも、小さな企画展示が出来るくらいのサイズで設けられた中庭は、どの方向からもみえて、その形状、明るさ、また展示への興味で自然と誘い込まれるような魅力がありました。

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私が訪れた時は、中村好文さんの展示会が行われていました。

 何も知らずにこの期間に行ったのですが、私は中村さんの建築が本当に大好きで!中村さんの代表的建築物である小屋を実際に体感できて、とても幸せでした。。

 

 小屋の中に置かれている物たちも忠実に再現されているだけあって、本当に誰か住んでいるような生活感があふれていました。

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造り付けのソファーや小さな屋根裏空間に覗く椅子。。小屋と人の行動寸法に合わせて考えられた家具の数々にワクワクが止まりません!

・・・中村好文さんの話はこのくらいにしないと。

 

  これらの中庭を介して各展示室が見え隠れし、緩やかに感覚的に繋がる様子は、他の美術館では感じたことのないもので、まるで一つの建物の中にいるのではなく、分かれた家々を渡り歩くような感覚でした。

チケットを買って入る美術館ゾーンですが、交流ゾーンとの隔たりはロープだったり、透明なガラスだったり、差異なく一体の空間として捉えたい気持ちが強く現れていました。きっと出来ることなら、美術館自体誰でもフラっと入れるようにしたかったんじゃないかなと思います。(だから無料ってわけにはいかないけど。。)

 

 外構の円型で形として「開かれた美術館」を表現するだけでなく、内部の巧妙な構成により、緩やかに自然と人々の交流を生む、気持ちも「開く美術館」を実現したのではないかと思いました。

子供も多くて、美術館にしては本当に賑やかで。だけど、それも微笑ましく思うような空気感。それはこの美術館が自然光を取り込み暖かな光に包まれているからかもしれないし、低すぎず高すぎない天井高にあるのかもしれない。

 

 なんだか分からないけど、心地よい。そう訪れた人に思わせるのが、SANAAの建築だと感じました。

街の中に違和感なく溶け込みそれでいて存在感を出す建築、その中に生まれる小さなもう一つの街。

 

 このような建築を小さな頃から身近に感じられる子供たちは、本当に幸せ者だなぁと思います。いろいろな身体体験を通して、自由な感性を養えそうですよね。

 とても有意義な時間を過ごさせていただきました。

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また来ます、金沢。