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駿府教会

 今回はいつもと少し趣向が変わり、教会建築のご紹介です。

 

静岡県静岡市にある日本基督教会の「駿府教会」。

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「新建築」という雑誌の2008年11月号の表紙にもなった一見教会とは思えない木造の建物です。外装・内装含め細やかな工夫がこらせれており、建築学生必見ということで見学させて頂きました。

今回はわざわざ見学させて頂くということで(別に予約など必要というわけではありません)、建築雑誌を見て図面や説明を事前に学習していきました。そのアウトプットの意味も込めているので、建築的観点の話が多くなることをご了承ください。

 

 それでは、まずは外観から。

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少々遠方からの写真過ぎますが(笑)、右手前から3軒目の建物が駿府教会になります。

 線路沿いの角地という敷地に、礼拝堂を線路側に四角いボリュームで配置し、会議室・トイレ・牧師さんの住居などの諸室を線路から離れた住宅街側に配置しています。

1枚目の写真から分かるように、牧師さんの住居部分は切妻の2階建てで街並みに呼応した外観を配慮したのだろうと思います。

 

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外壁はレッドシダーの割り肌板の縦張りで仕上げられています。木々の表面の凹凸で陰影ができ、時刻によって表情を変えます。私が訪れたのは、午後4時頃。(この日は礼拝の後、集会があったそうで入るのを遠慮しました。)もう日が落ちかけていたので、そこは少し残念でした。

この割り肌板は無塗装で数年をかけて黒灰色へ炭化していくそうです。

 

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この写真は午後5時頃、私が教会を出てフラフラしていたらいつの間にか閉められていた門で、運良く閉まった状態も見ることができました。きっと何も言わず、私が帰るのを待ってくれたのでしょう・・・。申し訳ないし、有難い。

 それで、この礼拝堂の西の角にある玄関にはこのように門扉が設けられておりまして、ブドウの蔦があしらわれています。

 

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門扉を開くとこんな感じ。玄関ポーチ部分にキレイに収まり、壁面の模様のようにもなります。

 

 設計は西沢大良さんで、自身もクリスチャンであり牧師さんから依頼を受け、設計を担当することになったそうです。設計にあたり、プロテスタント教会の理想の形を追求し、教会に訪れる方々が木のぬくもりを感じ、ホッと出来る礼拝堂を目指しました。

 

 続いて、内部の考察を始めます。

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南東側コーナーを見上げる、見事な板張りの内観に思わず息を呑みました・・・。

 

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もう少し分かりやすく、縦に撮った写真と、説教台を正面から見た写真です。

 トップライトから光が差し込み、壁面に窓はありませんが、礼拝堂の中は柔らかな光に包まれていました。

写真からお分かり頂けると思いますが、内装のパイン材の目透し張りは下から上へと少しづつ幅が変えられています。一番下は90mmで一番上は18mmにも細められているそうです。また左から右にかけて、その細まる割合も変わっています。

 

 礼拝堂の壁の厚さは760mm,屋根の厚さは1300mmほどあり、この厚さが光と音の調節に役立っているそうなのです。 それは、プロテスタントの教会にとって最も重要とされるべきもので、聖書における神の第一声が「光あれ」であり、光が特別な存在だから故です。そして聖書を皆で音読そるときに心地よく、牧師さんの声がマイクを使わずとも明瞭に聞こえ、賛美歌が美しく響くように。光と同等に音にも重視されました。

 

 「このコンセプトを礼拝の本来の目的を体感した上で理解してほしい」という意味で、牧師さんは見学の要望を受け入れる際、礼拝への参加を促すそうで、私も電話でそのように言って頂きましたが、時間的に間に合わず参加できませんでした。

これまでにも多くの見学者が訪れているそうですが、やはり建物の本来の目的や利用されている方々への配慮を忘れてはいけないと思いました。

 

 私が訪れたときはもう諸行事が終わり、数名の方が残られている感じでした。そわそわしていたら、牧師さんがパンフレットを渡してくださり、さらに常連さんのような方が建物の説明を始めてくださいました。

正直、建築だけを求めて見に行くのが申し訳ないかなと思っていたので、皆さんが優しく笑顔でいてくれたことに安堵しました。

 

 そして「ここ見てみろ!」と、いきなり壁を外し出す常連さん。

へ?何事??

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ほ!これは建築雑誌にも載ってなかったぞ!

 実はルーバーの中に照明が隠されていて、夜になると下からの照明のみで教会はボワーっと照らされるそうです。「ナイトバーのようだ」と例えられていましたが、牧師さんは苦笑いでした。。

 

 もう一人いらっしゃったお婆さんは、ルーバーを見て感動する私に、「大工泣かせの工事だったらしいよ」と微笑まれていました。そりゃそうだよなー。木造建築で工期約1年て、長い方かな?

 

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こちらは壁面寄り寄り。後ろのトラス柱との接合部を見て頂きたいのですが、釘の上から円柱型に切り出した木のパーツを埋め込んでいるのです。ですから内壁には一切、木以外見えなくて、そこにも繊細で柔らかな雰囲気を与える要因が隠されているのだろうと思いました。

 

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礼拝堂の中心から真上を見上げる、天井のルーバーは壁に対して45度振られています。

 トラス梁は構造や音響への役割を果たしつつ、デザインとしてもその効果は有効で、昼間だったらトップライトやトラスのシルエットが映し出され、堂内の表情を生むのでしょう。

 

 教会という神聖な場所。固定観念で思い浮かべる教会とは始めだいぶイメージが違った駿府教会ですが、本当は表しているものは同じかそれ以上で、聖書を自然光の中で読めて、マイクを通さず生の声を届けることができる。そうすることで、牧師さんと信者の方々の繋がりが強くなっていること、そしてこの教会にも愛着を持ち強い繋がりを持っているのかなと感じました。

とても空気も人々も暖かい空間でした。

 

 もし見学に行かれる際は、教会の催し事がないか、訪れて良い時間がいつなのかなどを電話で問い合わせてから伺われると良いかと思います。