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家プロジェクト

「家プロジェクト」は、直島の本村地区において古い家屋を改修し、アーティストが家の空間そのものを作品化したプロジェクトです。ここでは、そこで営まれていた生活や日本の文化、伝統、美意識をアーティストがそれぞれの建物に表現し、一般公開されています。

 

それでは、順に紹介していきたいと思います!

今回も撮影が禁止されていたところの写真は公式サイトのものですので、ご了承ください。

 

 

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スタートは、「本村ラウンジ&アーカイブ」。

ここで家プロジェクトの鑑賞チケットを購入できます。ここは、農協のスーパーマーケットとして使用されていました。その基本的な構造はほとんどそのままに、読書や休憩がしやすい空間が作られています。デザインは西沢立衛さんです。

休憩スペースにはアートプロジェクトを手がけたアーティストや建築家の書籍・資料が置いてあり、自由に観覧する事が出来ます。

関連グッズや書籍なども販売していて、他のところにあまり売店がないのでここで商品を購入している人は多かったです。

 

 

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「石橋」。少し離れたところにあるので先に行きました。

明治時代に製塩業で栄えた石橋家という一族がいたそうです。直島では古くから製塩業が人々の生活を支えていて、直島の歴史や文化を残すという観点から、家そのものの保存に重点が置かれています。

典型的な設計の家で、縁側から観る庭と千住博さんの襖絵がキレイでした。

 

迷惑にならないよう心掛けながら、小道をぶらぶら。

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古い家屋が立ち並び、場所によっては廃墟もありました。趣があって写真に収めたい町並み、時間の流れが止まっているような感覚を受けました。

 

 

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続いては「はいしゃ」。

かつて歯科医院兼住居だった建物らしいですが、原型を感じない・・・。個人的に外観では1番衝撃を受けた家です。大竹伸朗さんが家をまるごと作品化してしまいました。

家の外装は、錆び付いたトタンで昔の広告看板や企業名が印刷された鏡が張ってあったりと遊び心満載です。

気になる内装ですが、全体的に青い塗料が塗られ、あるところには彫刻が置かれていたり、不思議な絵画が描かれていたり、さまざまなものがスクラップされていたり、実に多様な芸術のスタイルが盛り込まれていました。

3mほどある自由の女神像や、写真に写っている家の左側にある黒い壁に囲まれた空間は圧巻です。

作品タイトルの「舌上夢」という言葉は、何かを口に入れた時に、味や匂いから夢の記憶を辿るプロセスを表現しているそうです。確かに、幻想的でありどこが人間的な夢の世界にいるような感覚になりました。

 

 

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ただの黒い箱のようにも見える「南寺」。

この家の近くには極楽寺八幡神社などがあり、直島の歴史的、文化的な中心地となっている場所に新たに建設されました。

かつてはここにお寺が現存していて地域住民の精神的な拠り所であったという記憶をとどめようと、安藤忠雄さんが設計しました。

内部にはジェームズ・タレルの作品「Backside of the Moon」があります。鑑賞をする前に予備知識をあまり付けてはいけないようなので書けないのが残念ですが、アハ体験というか人間の目って面白いなって感動しました。あの感情は味わったことないです!

中は真っ暗で壁をつたわないと歩けないレベルなのですが、それを楽しんで入っていく人、不快感を示しながらすぐに出て行く人、中での過ごし方が人それぞれ違って面白かったです。ちなみに怒ってるのは大概が大人の男性で、子供の頃の冒険心忘れちゃったのかなー、なんて思ったり・・・(^ω^)

 

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安藤さんのコンクリートじゃない建築物久しぶりかも。

明と暗、人工物と自然の対称性を感じる空間で面白かったです。

 

 

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長い階段を登ると現れる「護王神社」。

江戸時代から祀られている護王神社の改築にあわせて、杉本博司さんが設計しました。

洞窟の中のような石室と写真に写っている本殿とはガラスの階段で結ばれていて、地下と地上とが一つの世界を形成しています。狭く静かで、光を透過するガラスの階段により明かるさが保たれている石室は神秘的です。

本殿と拝殿は、伊勢神宮など初期の神社建築の様式を取り入れながらデザインされています。

 

 

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家プロジェクト第一弾として完成した「角屋」。

ゴミステーションをフレームアウトさせられる構図が見つからなかった、無念。

 

家の内装は、ネオンを用いた作品が多数。その中で代表的なものは、「Sea of Time '98」という部屋の床に水が張られ、無数の数字を書いたネオンが点滅するもの。

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この作品の制作には島の人々も参加し、1人1人が好きな数字を選び、点滅する速度も自分たちで考えたそうです。

このことに安藤さんは著書で『(オープンの日に集まってきた島の人々は)顔を見ると、到底現代美術とは関係のないような人たちです。彼らは自分たちが深くその制作に関わった作品に感動しました。今後も島全体がそういった文化活動に巻き込んでいくことで、それまで漁業と金属工業で知られていた直島を新しい島に活性していくことにつながります。美術館の存在や美術活動が何よりも、島の人びとの意識を現代に結びつけ活性していきます。』と述べています。

小さなものでも自分が作ったものが展示されたら誰でも嬉しいですよね。

島の方々は道でお会いしても皆さん優しくて親切にして下さいます。きっと自分たちも作品を展示しているという誇りがあり、美術館を運営する側に立っているという精神があるのだと思います。

このプロジェクトが建築だけではなく、人々の気持ちも一体となったときに完成するのだと分かりました。

 

 

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小さな入り口が印象的な「碁会所」。

「碁会所」という名称は、碁を打つ場所として島の人々がかつて集まっていたことに由来しています。

建物全体を作品空間として須田悦弘さんが手がけていて、2畳ほどの和室が左右に設けられており、その内部には速水御舟の「名樹散椿」から着想を得て作られた作品「椿」が展示されています。

2つの部屋は対象に作られているように見えますが、実は秘密があるんです。係の方がその問題を出してくれたのですが、全然答えを教えてくれません。自分で見つけるまで頑張ってみて下さい。なるほど〜ってなって面白かったです。

庭には本物の五色椿が植えられていて、室内の椿と対比的な効果をつくりだしています。

 

 

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最後に訪れたのは「きんざ」。

「きんざ」は鑑賞チケットでは入ることが出来ず、前日までに予約し別途料金を払う必要があります。時間指定で1人15分、団体だとしても必ず1人ずつしか入館できません。すごい徹底ぶり。

 

午後1番の時間に予約を入れ、昼の1時間は閉められているのですが暇だったし15分前くらいから入り口で待っていました。

そしたら、係の方が時間より前に中に入れて下さって、25分くらい鑑賞できました!

 

内部はこんな感じです。照明はなくて壁に開けられたスリットから採光しています。

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正直、25分もいて作品の意味が分かったかと言われたら、答えられませんが・・・

静かにじっと座っていると、だんだん目が慣れてきたり、外の微かな音が聞こえてきたり、足元にスリットから入ってきた風を感じたり、五感が研ぎ澄まされていく感じがほんとに分かりました。

普段だとただぼーっと座っていることもしませんし、時には無になることも大切かなと思いました。とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。

 

計7軒が公開されている家プロジェクト。それぞれを回りながら、直島の本村地区を一周することが出来ます。

アート作品だけでなく、自然や人々との繋がりにも目を向けて、人が住み活気があった頃の記憶や時の流れに思いを馳せることが、このプロジェクトに込められた思いだと思います。

 

地図を見ながら、宝探しのように家々を巡って、時には小道に入ってみたり、とても楽しかったです。

こんなふうに東京の下町とかも散歩したら楽しいだろうなー!