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江戸東京たてもの園

2013/05/01 建築を学び始めて間もない頃、実際に多くの建物をまとめて見ちゃいましょーてな具合で、江戸東京たてもの園を訪れました。

 

江戸東京たてもの園は、武蔵小金井駅からバスで5分、都立小金井公園の中のあります。

歩いてでも行けるだろうとバスに乗らずに向かいましたが、激しく迷ったのでバスに乗る事をおすすめします。私が方向音痴なだけかも知れませんが。

 

園内には、江戸時代から昭和初期までの30棟もの復元建築物が立ち並んでいます。

現地保存が困難な文化的価値の高い歴史的建造物を移築し、保存・公開することで貴重な文化遺産を後世に引き継いでいくことを目標に運営されています。

 

建設されている建物の種類は実に多様で、ほんとに一度に日本の伝統建築を訪れる事が出来ます。

その中でも特に注目してもらいたいのは、前川國男邸です。

前川國男はル・コルビィジエの弟子であり、日本のモダニズム建築の先駆者と言われた建築家で、コルビィジエとは互いに「コル」「クニ」と呼び合う仲だったそうです。

そんな前川さんの昭和17年に建てられた自邸がこちらです。

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左右対称で大きな窓が印象的な立面。

壁は戦争の空襲から逃れるため、黒く塗られています。

当時の建築に馴染ませるため瓦屋根を乗せ、一見和風のデザインでまとめられているかのように思いますが、随所にモダニズムの精神が感じられます。

 

内部も見学する事が出来ます。

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何と言っても、この家の最大の特徴は吹き抜けのなっている大きなリビングです。

シンボリックな太い柱を挟んだ大きな窓から光が差し込み、細部まで計算されたロフトまで包み込み、開放感に溢れた明るい空間が広がっています。

 

さらに、この家には空間を豊かにする実に巧妙な仕掛けがいくつも施されています。

そのひとつは、北側と南側の窓の配置で、両方の窓を開け壁の中に仕舞い込むと南北が一本道で繋がります。それにより家に回遊性が生まれると共に、柱だけの空間が現れる訳ですから、それはコルビィジエが定説した「近代建築の5原則」の1つ「ピロティー」を表現しており、コルビィジエの影響を強く受けているという事が分かります。

 

玄関の扉がうち開きな所も気になりましたが、部屋に繋がる扉の細工も実に見事なものでした。

扉はあえて大きく設けられ、その部分だけ天井を低くし暗くする事で、視覚的にリビングが大きく感じられるようになっています。

 

各部屋の細部まで色々な工夫が施されていて、今から何十年も前に建設されたとは信じられませんでした。

日本のモダニズム建築において、この前川國男さんの自邸がよく取り上げられる理由が現物を見る事で、理解できたような気がします。

いままでの常識を打ち破り、初めは理解されなかったとしても大衆を驚かせ受け入れられ、新たな時代を作り上げることの難しさとその情熱に感動しました。

これからの建築にも、そのような現象は起こるのでしょうかね。

 

見学を終えた時間はちょうどお昼時。

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公園には遠足中の園児がたくさんいて、天気が良かったので私も外でお昼を食べました。

ここの公園は傾斜が少なく芝生が一面に広がっていて、子供が障害物など気にする事なく走り回れるのがいいところだと思いました。

東京で自然と触れ合う機会があると、いつも以上に自然の大切さを感じます。

建物だけを学ぶだけでなく、周辺地域の自然環境を考えられてこそ、建築することだと思うので、ずっとこの気持ちを忘れないでいたいと思います。

 

江戸東京たてもの園の見学は、私が大学生のうちに色々な建築物・土地に触れてみようという思いを持つきっかけとなったものでした。

建築を学び始めた人に、そうでない誰でも、ぜひ訪れてほしいなと思う場所です。